数寄屋づくりのこだわり

木に学び
木の性質を
知り尽くした上で活用し
木の命は建物の命

施主との信頼関係と素材へのこだわり

数寄屋建築において重視するのは、施主様の好みと信頼関係と素材のこだわりです。
茶室や数寄屋建築は、施主(茶人や住まい手)の美意識や思いを灯す空間でもあります。棟梁は打ち合わせを重ね、施主の「心」に寄り添った設計を行います。近年手がけた寺院の庫裡の数寄屋造りでは、樹齢270~300年にもなる国産材(吉野、赤杉、赤檜、地松など)を選定し、2年以上かけて天然乾燥させてから使用しました。
さらに伝統技法で木材を洗い出し、木目や質感を最大限に引き出しています。職人たちの高度な技を結集し、150坪規模の庫裡の居住空間を約3年がかりで新築するプロジェクトに、真摯に取り組みました。
時間と手間を惜しまず、「木に学び、木に生かされ、木に悩む」という姿勢こそが、数寄屋づくりにおける田子和則の真骨頂です。数寄屋づくりはまさに「木に学び、木の性質を知り尽くした上で活用し、木の命は建物の命」として、合体して空間を支えてくれます。

木の選定と加工

まずは施主様に各部屋ごとの施工図・木材調書をもとに造作材・銘木を説明し、使用木材の材種を納得していただくことが大事です。日本の森林は四季があり、素晴らしい銘木が沢山あります。数寄屋の材としては、吉野杉、国産地松、赤欅などが有名です。
本数寄屋づくりでは、樹齢300年の吉野杉原木を伐採、木枯らし乾燥を約2年行い、厚板に製材、さらに1年半乾燥させ、製材します。国産地松は今一番手に入りにくい材料ですが、松の色合い・肌触り・光沢共に最高品です。これらの選定材は、現場に納材されるまで、天井板桟加工、浮造り加工、欅板・松板等の吸付桟加工、吹き漆・本漆等の加工や塗装が施されます。

吉野杉300年原木
吉野杉300年原木
吉野杉300年原木
吉野杉300年原木

外廻りの技法

数寄屋外観の特徴の一つは、華麗な屋根と軒の出の美しさにあります。軒が出ていることにより、建物のバランスが良く、土壁、外廻りの建具、すべて木製建具であり、雨戸、ガラス戸、戸袋等、建築全体の耐久性にも良く、軒先の出が長いほど雨掛かりを防いでくれます。

正面玄関前の土庇
正面玄関前の土庇

「大工と雀は軒でなく」

この格言は大工は軒の出、施工で苦労するという意味です。
外部材派全て、今までの経験から吉野赤杉・赤檜を使用しております。目の詰まった赤身を使用することにより、腐りにくく、長持ちします。赤身の杢目・柾目の美しさと材の色合いが美しい外部使用造作材では、辺材(白太)を使用しておりません。赤身は辺材を避けて樹芯に近い、無節か上小節といった樹齢200年〜300年の役物から造材するため、材のコストが高くつきます。外廻りの材は雨風に強い材で、数寄屋に適した材を選定することが大事です。棟梁として、木に教えて頂いた経験を生かす大切な木材の選定となります。
何度経験しても真剣勝負で、緊張感のある場面です。

外廻りの部材
外廻りの部材

天井の施工

数寄屋建築の天井は全て無垢材でできています。総天然木仕上げで、吉野赤杉の柾目・杢目・板目・中杢を使用しています。
無垢の天然木だけに言葉できない美しさがあり、シート、クロス、突き板貼では出せない表現です。天井板は、樹齢270年ほどの銘木から造材しております。現在は乾燥した材をストックしておく会社がなく、入手するのが難しくなりました。大事なことは、同じ木からとった材を一部屋後とに場所と位置を決めて配置することです。そうすると、杢目も色も揃って、自然と調和の取れた仕上がりとなります。

竿縁猿頬面取り
竿縁猿頬面取り
帖赤杉中杢底目天井
帖赤杉中杢底目天井
赤杉柾目板を底目地貼
赤杉柾目板を底目地貼

竹半割天井の施工

まず現場の壁下地、全ての仕上がり寸法を綿密に出し、最終の廻り縁の仕上がり寸法を決めます。
階段で一部が勾配天井なので、全ての寸法を出し、晒竹半割の有効寸法を出し、製作図を書いて竹屋さんに出します。幅については、あらかじめ寸法を決めて切断し、竹屋さんに施工図をお渡しして、図面通りの加工して納材していただきます。大工さんとは綿密に打ち合わせを実施し、最終的には大工さんが竹の小口を1回もきらず、竹屋さんが小口にバリを出さずに直角切断する技術が求められます。施工の完成時には、言葉で言い表せない技術の絆が出来たように思います。特に数寄屋は高度な技術が求められ、扱う素材ごとに、道具と経験から生まれる技術が求められます。

赤杉厚貼矢羽根網代天井
赤杉厚貼矢羽根網代天井
階段天井、晒竹半割、タテ貼
階段天井、晒竹半割、タテ貼

茶室

お茶室は、自然素材や素朴な材料を使用し、穏やかな佇まいを目指して仕上げています。壁には本聚楽(ほんじゅらく)を選び、切り返し仕上げによって表情に奥行きを持たせました。蔦をふんだんに入れることで、土の質感と陰影が引き立ち、素朴で美しい仕上がりになります。空間にやわらかみを与えるために、丸窓を設置し、光を穏やかに取り込みます。障子は障子紙をれんが貼りとし、約1.5mm重なるよう丁寧に貼り付けています。手仕事ならではの精度が一つのデザインとなり、木部には細身の赤杉を用いて、繊細で端正な輪郭をつくりました。

茶室丸窓
茶室丸窓
茶室・物置き
茶室・物置き

風呂場、洗面脱衣所

風呂場の仕上げ材には、高野槙をふんだんに使用しております。
高野槙は、檜よりも長持ちしやすく、腐りにくく、独特の香りがします。浴槽だけでなく、天井や換気口の格子にも高野槙を施しました。選定に至っては、施主様の好まれる風呂を伺った上で、「体が温まる、疲れが取れる、心が癒やされる風呂場」として高野槙を選びました。浴室に使う木材としては、大変貴重な素材です。
洗面脱衣では、床、壁、天井に吉野赤檜を施しました。水廻りで無垢の木を用いるには、カビ発生防止が不可欠です。そこでカビの発生を防ぎながら、国産材の美しさを引き立たせるための塗料を仲間と一緒に開発しました。居住へのこだわりはもちろんのことですが、お風呂やトイレでも落ち着いた気持ちで数寄屋の魅力を実感してもらえるよう施しました。

風呂場
風呂場
洗面所
洗面所