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未来に伝えたいさしがねの技(第3回)

 先ず、さしがねの目盛は昔からどのようにできているかをご説明したいと思います。
 第2回目では、さしがねの形状(長手、短手)がどのように決められたのか、そしてさしがねの裏目が表目の√2(1.41421356)倍に刻まれていること。これは、日本建築が90度(直角)と45度の隅木の形状が多く取り入れられていることからであり、これを裏目として目盛った先人の知恵に感謝いたしたいと存じます。また、丸目尺についてもご説明申し上げました。
 今回は、穴目尺、唐尺(縁起尺)、田子式さしがねに刻まれている直投げ目盛、向う留め目盛、棒隅の配付け目盛(垂木の配付け角度)などについてご説明いたします。規矩術を勉強する前に、さしがねの目盛について理解することが大切ですので、それぞれの目盛の役割、利用方法を良く理解しておいてください。
 穴目尺とは、長手の先端に刻まれており、ほぞ穴の深さを測る場合等に使用します。
 唐尺(縁起尺)は昔、吉凶判断に用いられていたもので、さしがねによっては1尺2寸を八つ割にしたものと9寸6分を八つ割にしたものがあるようで、財・病・離・義・官・劫・害・吉の文字が刻まれています。昔は門戸の寸法を決めるとき等に財・義・官・吉の吉寸を使用したとの文献も残っているようです。
 次に、直投げ目盛、向う留め目盛、棒隅の配付け目盛の使用方法については図1~図3にさしがねの当て方として説明しています。
 詳細につきましては、次回以降の規矩術のご説明の中で詳しく述べさせていただくつもりです。

 今回3回目までさしがねの由来、目盛の使用法についてご理解いただくために説明申し上げましたが、次回から規矩図とさしがねの使い方について、実践に入りたいと思います。

田子式規矩法大和流六代目 棟梁 田子和則

月刊 住宅ジャーナル 2016年2月号(VOL87)に掲載

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