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未来に伝えたいさしがねの技(第5回)

≪平勾配と返し勾配、矩勾配≫

 規矩術の勉強を進めてまいりますと、平(ひら)勾配、返し勾配、矩(かね)勾配といった言葉がでてきます。その他にも隅(すみ)勾配、隅返し勾配や勾(こう)・殳(こ)・玄(げん)の名称を使った文言がいろいろと出てまいります。これらの名称についても良く理解しておいて頂く必要があります。例えば中勾(ちゅうこう)の勾配とか、短玄(たんげん)の勾配といったような言葉で説明することが多くなります。


・平勾配

 平勾配とは、梁間(はりま)を「殳」、束(つか)立ちを「勾」として、垂木が構成する傾斜のことを言います。図1において勾が1尺となるまでは平勾配と言います。また、1尺の殳に対し勾が4寸だと4寸勾配となります。


・返し勾配

 返し勾配とは矩勾配より傾斜が急である勾配です。これを返し勾配または転び勾配とも呼んでいます。また、返し勾配は図2のように4寸勾配の返し勾配とか4寸勾配の転びと言うように使われています。



・矩勾配

 矩勾配は図1に示すように、梁間「殳」と束立ち「勾」が同寸1:1であり、45度の傾斜を矩勾配と呼びます。 束立ちが1以上を返し勾配、1以下を平勾配とご理解ください。


・隅勾配

 棒隅の場合には、図3のように2つの平勾配が45度に交わって四角い隅を作る時、この稜線が隅勾配となります。また、平勾配と隅勾配の関係は図4のようになります。


 次に、さしがねによって平勾配、返し勾配を求める方法として、例えば4寸勾配の平勾配や、その返し勾配の墨付けを行う場合のさしがねの当て方を図5に示します。


 また、ご参考までに、以下に勾・殳・玄の各部寸法の説明とその求め方を掲載いたします。


田子式規矩法大和流六代目 棟梁 田子和則

月刊 住宅ジャーナル 2016年4月号(VOL89)に掲載

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