番匠は日本の森林を守ります

日本の建築技術を伝承し、環境を大切にします

森の働き

統計でみると日本国土の67%は森林です。空から眺めると日本列島が「森の島々である」ことが良くわかります。山に雨が降り、木がその水を吸い上げ成長し空気の浄化をしてくれます。その後年月を経て、湧き水となり沢に集まり、川となります。その豊かな森林から生まれた川は平原に流れ、安全で美味しい食べ物を育ててくれます。そして海へと流れ、美味しい魚も育ててくれます。森林はこんな大事なことを黙ってしてくれています。それも何千年、何億年も…。

また、日本には自然林の他にも私たちの暮らしを守るために管理されている保安林があります。例えば道路や鉄道を雪から守る防雪林を始めとする水源涵養保安林、土砂流出防備保安林など17種類あります。このうち、あまり聞きなれない「魚つき保安林」というのは海に流れ込む水の汚濁を防ぐ役目や、養分の豊かな水を供給することによって魚の繁殖を助けるなど…。森林を育てることによって、木材を産出するだけでなく、森林には様々な働きがあります。洪水や渇水を緩和し良質な水を育む働き、山地災害を防ぐ働き、二酸化炭素の吸収、騒音を防ぐ働き、野生鳥獣の生息の場として、また私たちのレクリエーションの場としても数えきれません。森林浴もその一つです。

自然環境

今まさに、森林は自然環境を守り、国民の生活環境、健康は勿論、CO2削減に多大に貢献していることを再認識し、日本の森林を守ることが必要なことです。現在、戦後植えた木が伐採期にあります。植林も大事ですけれど、定期的に伐採し森林を整備することが大切です。つまり住宅を建てる用材も国産材をなるべく使うことが大切で、勿論公共施設もしかりです。日本国土と森林を再生するためには、国民一丸となって真剣に環境問題に向き合う必要がある時期に来ています。国民全員で協力して林業を活性化し、森林を守って頂きたいと思います。森林は国民一人一人の財産でもあり、また責任もあります。資源は循環して暮らしに結びついていると思います。もう一度資源循環に戻す努力をすることこそ環境問題の解決策ではないでしょうか。

林業の活性化

こうした大切な森林を守るのが林業に携わる人たちです。私は林業という仕事は木を育てるのではなく、森を育てる仕事ではないかと思います。しかし今現在、昭和60年代初めには45万人もいた林業就労者が、現在では9万人しかいません。それも約20%の人が高齢者です。これでは森林を守ることができません。まさに今、山林国である日本の山が泣いています。それには幾つかの原因があるのではないでしょうか。

一つには日本の住宅文化と生活環境が大きく変化したことと思います。昭和の初めの頃は学校も公共施設も住宅もほとんどが木造建築で、漬物樽も、酒樽、味噌樽、燃料も薪炭、風呂桶、水桶、机、その他生活用品は木製品が多く使われていました。その他、数えきれない…それもほとんど国産材でした。現在はどうでしょうか?住宅は木造がいまだ多いが約80%が外材です。樽、桶、生活用品のほとんどがプラスチックに代わり、燃料は石油、ガス…。これでは木の需要が激減するのは止めようがありません。従って林業就労者が少なくなり山が守れなくなります。守れなくなれば森林が荒れる、山が荒れたら水が濁り良い作物もできなくなり魚も寄ってこなくなり、二酸化炭素も増えます。これでは悪循環になり、取り返しのつかないことになってしまうのではないでしょうか。